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レセプト研究の文献レビュー
更新日:2024年1月15日
日本の様々なレセプト研究について、6NCのメンバーで協力して網羅的に情報を整理しました。
今後の有意義なレセプト研究の実施や、医療政策を検討する際の情報収集としてご利用ください。
目次
- 今回のレセプト研究調査の背景
- 調査方法
- 文献レビューのご紹介
【1】全レセプト研究の概観についてのレビュー
データの期間、セッティング(全国・地域名)、対象疾患(ICD10章分類)、研究目的などに関してデータ抽出を行い、全レセプトの概観をまとめました。文献の検索式や検索可能にしたクロステーブル(レセプト研究の論文リスト)を掲載しました(1)
【2】NDB研究についてのレビュー
NDB研究論文についてより詳細に分析し、NDB研究の限界や対応策をまとめ掲載しました(2)
今回のレセプト研究調査の背景
- レセプトデータとは、保険診療のもとで行われた医療に関して、医療機関が発行する報酬明細書の通称で、患者や医療機関の情報、診療に関する傷病名や治療内容、投薬・処方などの情報が含まれています。
- レセプトデータを研究利用することで、全国や地域レベルでの診療実態や疾患の状況の把握が可能となり、エビデンスに基づく政策立案・施策の推進(EBPM:エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)に寄与することが期待されています。
- レセプトデータを用いた研究は増えています。一方で、レセプトデータは特有の限界や課題があることなど、研究利用や結果の解釈をする際に注意が必要なことも分かってきており、そうした点を整理して周知することが必要だと考えています。
調査方法
- 対象:2010年以降に出版された日本のレセプトデータ研究(日本語・英語)
- 対象としたレセプトの種類:医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬
- 文献検索:MEDLINE/EMBASE/医中誌Web(検索日:2021年4月)
※文献データベースからレセプトデータ研究を特定するため、医療情報の専門家により系統的検索式を作成し、関連文献を収集しました。
検索式 - NDB研究についてのレビューについては、上記文献検索のアップデートを行い(検索日:2023年6月)、厚生労働省が公表しているNDB研究の成果物リスト(2017-2023年)を用いてハンドサーチを行いました。方法の詳細に関しては調査の研究論文をご覧ください。(1) (2)
文献レビューのご紹介
【1】全レセプト研究の概観についてのレビュー(1)- 1,493件のレセプトデータ研究を対象に調査を行った結果、循環器系疾患、内分泌代謝疾患(主に糖尿病)、悪性新生物など、日本の重点疾患を中心に多くの研究が行われていました。研究目的に関しては、診療実態(治療・処方・検査等)や介入効果(治療予防効果・有害事象)、疾患の実態・経過(有病率・発生率・リスク因子・合併症・予後等)などが多く、その他多様な研究目的で研究が実施されていることがわかりました。
- 出版年、レセプトデータの種類(NDB、JMDC、MDV、DPC、国保・後期高齢者、協会けんぽ、その他等)、データの期間、セッティング(全国・地域名)、対象疾患(ICD10章分類)、研究目的などに関してデータ抽出を行い、表にまとめました。
全レセプト研究論文リスト
論文リストの使い方:使用しているレセプトの種類、対象疾患、実施している地域(全国か、特定の都道府県か)、調査年、などのキーワードを用いて一覧表を検索してご利用ください。
【2】NDB研究についてのレビュー(2)
- 合計 267 件のNDB研究を対象に調査を行った結果、全体で最も多い研究テーマは、処方や治療パターンの記述・推計に関する研究でした(125件:46.8%)。その他、疾患パターン(患者数・リスク因子等)、地域差、治療・薬剤の効果検証に関する研究が多く行われていました。
- NDB研究の限界を抽出し、以下のカテゴリに整理しました:
限界1)交絡因子、転帰、その他の臨床項目に関する情報の欠如
限界2)NDB に含まれない患者情報に関する限界
限界3)データの誤分類
限界4)ユニークな個人ID・加入者台帳の欠如
限界5)その他
限界2)NDB に含まれない患者情報に関する限界
限界3)データの誤分類
限界4)ユニークな個人ID・加入者台帳の欠如
限界5)その他
これらのデータベースの限界に対しては、各研究で対応策が工夫されていました。
例えば、限界1)に関しては、複数の請求コードを組み合わせて疾患や治療などを定義する、統計解析で対処する、限界3)では、複数の定義を作成して感度分析を実施する、他の統計データや海外のバリデーション研究を引用する、などの対策が講じられています。カテゴリごとに整理し、以下のリンクにまとめましたのでご参照ください。
例えば、限界1)に関しては、複数の請求コードを組み合わせて疾患や治療などを定義する、統計解析で対処する、限界3)では、複数の定義を作成して感度分析を実施する、他の統計データや海外のバリデーション研究を引用する、などの対策が講じられています。カテゴリごとに整理し、以下のリンクにまとめましたのでご参照ください。
書誌情報
(1)JMA Journal Vol. 6, No. 3, 2023 (2023年7月14日号)
(2)JMA JournalVol. 7, No. 1, 2024 (2024年1月15日号)
掲載日:2023年7月14日